源氏物語の部屋3

宇治の恋

源氏物語の3分の1は光源氏が世を去った後の話。
舞台は京都から宇治に移り、
「宇治十帖」(うじじゅうじょう)と呼ばれて名高い物語です。

吹きすさぶ風と宇治川の激しい水音が
全編を通じて流れており、
不思議な透明感のある世界を展開しています。
この絵は入水(じゅすい)しようとする浮舟と薫大将が
いれちがいになってしまうシーンです。

 ちなみに前方にあるアジサイは西洋種で、
この時代にはなかったものです。
ここに絵画のウソをお断りしておきましょう。


蜻蛉(かげろう)

これは入水した浮舟が、
横川の僧都(よかわのそうず)に助けられるシーンです。
正確にいうと、その場面は次の巻「手習」になるのですが、
絵のイメージからタイトルは「蜻蛉」としました。


宿木(やどりぎ)

この絵も宇治十帖の「宿木」によるもの。
構図は「源氏物語絵巻図」からとったものです。


柏木の恋

源氏物語の白眉であり、最大の悲劇である「若菜」の一場面です。

 むかし恋文、今メールではありませんが、
極端に男女のいた場所が区切られていた時代、
わずかなきっかけで人はすぐ恋に墜ちていきました。
そして禁じられた恋であればあるほど、
燃え上がるのは今もむかしも同じこと……。

 この絵は光源氏の正妻・女三の宮(おんなさんのみや)の姿を垣間見た
若い柏木が、たちまち恋におちる場面です。

猫が御簾(みす)を開けた瞬間の姿を見て
恋に堕ちたというのですから、その動態視力もたいしたもの。
柏木は光源氏の親友・頭中将の息子ですが、
あろうことか女三の宮とちぎりを結んでしまいます。

 それを知った源氏は柏木を恐ろしい視線でひと睨み。
気の小さい柏木は、それがきっかけに病となり、
やがて、泡の消えるように若い命を散らしてしまいます。

一方、女三の宮は身ごもり、
源氏の子供と偽って、
柏木の子・薫大将(かおるだいしょう)を生みます。
遺伝子がすべてのこの時代、光源氏の苦しみたるや、
今では想像もできないものだったことでしょう。

 古くからさまざまな絵描きが
好んでとりあげてきた画題でもあります。


真木柱(まきばしら)

真木柱は無骨ものの鬚黒の大将と
玉鬘(たまかずら)の間に生まれた女の子。
この二人の家庭内のいざこざを描いた巻で、
源氏物語全体の本筋にはあまり関係ない部分です。

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「源氏物語の部屋」は5部屋あります

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